先週も大阪、東京、御代田と移動の日々。
金曜日は、東京で先日トークイベントでもご一緒した井上岳一さんたちによる「山水郷のデザイン」展へ。
行く前に「(最近井上さんが出演された)Podcastが面白かったです!」とメッセージを送りながら展覧会に着いたら、まさにそのPodcast「た行でつくるポートフォリオ」のREDD望月重太朗さんもいて話せたり、展示されていたMUJUNの小林新也さんにもお会いできたり。
小林さんは、アムステルダムでブランドを立ち上げつつ地元で刃物職人の後継者育成の仕組みを作り、島根県温泉津(ゆのつ)では山を買ってたたら製鉄の実験や製材などもはじめている。
他の展示も、沖縄の共同売店の話、高知土佐の東南アジアマーケットを通じた多文化共生の取り組み、どれも伝統工芸、林業、過疎、技能実習生、背後には今日本が直面するシビアな課題があるけれど、なんだか楽しそうでワクワクする取り組みだった。
その夜はTakramメンバーで食事。ここでも政治や社会情勢の話からくだらない話まで、普段なかなかできない仕事以外の話が出来てよかった。
土曜日は御代田に戻って、最近参加している「風の谷という希望」の読書会。
御代田のコワーキングスペースゴカラボの有志企画でシリーズで開催されていて、中盤の具体的な実践に関わる章の読書会はまさにその領域で実践している人の話を現場で聞きながらやろうということで(それぞれ思い当たる人がいるのがすごい)、この日は「林業芸術社」を立ち上げ、山や森を自然と人間の調和する場にしていく取り組みを実践している太田泰友さんに現場を案内してもらいながら話を聞いた。これがなにしろ勉強になったし、面白かった。
地形、植生、水の流れ、日の入り方、、いろんなことを緻密に考慮しながら、ゆっくり丁寧に道をひらく技術を、徳島や福井の師匠に師事しながら着実に身につけつつある太田さん。始めて数年で徐々に答え合わせも出来つつあり、やっていることが間違ってないと確信を持ちつつあるという。100年単位で人間と自然の調和を維持できる環境をつくるためには、その場限りではなく継続的な関わりが必要で、本当に凄いことをしてると思う。もちろん、いろいろとリアルな課題も聞いて、自分も林芸会員になってこれから何かいろいろ関わっていこうと思う。
夜は家族で食事。自分の誕生日だけど、受験生の息子もテスト前なのでいつも通りに家で。いつもの食卓に改めて感謝。
日曜日は、朝から地元の消防団仕事をしてから、午後はお台場のMaker Faireへ。久しぶりに来たけれど、思いかえせば実は万博「いのち動的平衡館」でLED基板の回路設計・製造実装を担当していただいたKPD加藤木さんとは、お台場で初開催された2012年のMaker Faireで知り合ったのがきっかけで、あの時の出会いがなければ実現していなかったかもしれないと思うと、本当に感慨深い。
久しぶりのMaker Faireは、相変わらず企業ブースも個人ブースもいい意味でカオスで、ここでしか得られないものがあり、久しぶりの方々にも何人も会えた。今年実は田んぼに自作の水位水温センサーを作ってモニターしてみたのだが、それに使ったM5Stackという、その界隈ではよく知られるIoTプロトタイピングモジュールメーカーのCEO Jimmyさんとも繋がれた。深圳にも行ってみたい。(この話はまた改めて書こう。)
ところで、この数日感じたのは、ほんとにますますみんなネットでは大事なことは何も言わなくなってるんじゃないかということ。少しでも賛否両論ありそうなことをネット上に書くハードルはどんどん高くなっていて、(もちろん気にせずに書く人も、とても気をつけて書く人もいるけど)直接行ったり会ったりしないと聞けないことがめちゃくちゃ増えてないかと。
今年の誕生日を、いろんな人に会い、いろんな現場に行く日々の中で迎えることになったことはなんだかとても示唆的だなと思った。
最後に、太田さんの話のメモ。メモなのでちょっと間違ってるかもしれないけど、山や森に対する解像度がめちゃくちゃ上がったというか、環世界ががらりと変わったというか、とにかく面白かったので。
この山はスギやヒノキを木材として出荷する針葉樹林ではなく、薪炭林(しんたんりん)とよばれる里山の生活のための広葉樹林。薪や炭にするので昔は伐採も運搬もしやすい両手で掴めるくらいの太さになる20年ほどのサイクルで伐採していた。若いうちに切るのでまたそこからまた芽が出て木が成長する「更新」ができた。生活に薪や炭を使わなくなりそのサイクルが途絶えてしまった。
山に入っていくための作業道の大事さ。水の流れを緻密に考えて、道をあえてカーブさせたりアップダウンさせたりしながらつくる。その場限りで安易に道を入れて一気に伐採するのは楽だが雨が降ると水が山肌を流れて道に流れ込み、道が削られて使えなくなるだけでなく土砂災害などにも繋がりかねない。
ちょうどいい道幅。道幅を広げるために斜面を削りすぎると、削ったところが高い壁になり安定しないので崩れるかコンクリなどで固めることになる。軽トラが入れる幅2.5mほどの道を、幅の半分削ってその分を斜面下側に盛る「半切り半盛り」でつくると、削った側も木の根が残る。しかも草が生えにくい深土と栄養豊富な表土を道と道端で使い分けることで、道はあまり草が生えず通りやすく保たれ、道の両側は根が張って安定強化される。道幅が広すぎないことは、両側の木々が道に差す光や雨を遮り、草が生えたり雨が道が削ることを防ぐ天然のアーケードのような役割もしている、、etc.
長い目で見ればとても合理的。ただ短期的な経済合理性だけを求めると「放置or安易な伐採」になる現実。
「風の谷」本に書かれていることは概ね間違ってないと思うけど、自分はその先をやっている感じという太田さんがさらっと言った言葉が響いた。