薪ストーブ

長野県の御代田町に移住して3年。冬場は最低気温が-10℃くらいになる日もある。暖房としてこの辺りでは薪ストーブを使っている家が多く、我が家も家を建てる時に薪ストーブを入れることにした。

はじめは何もわからないのでいろんな人に話を聞くと、まあみんな違うことを言うし、使ってる薪ストーブもみんな違う(笑)。

クラシックなスタイルの薪ストーブから、モダンな薪ストーブ、最近は薪の投入タイミングをスマホで教えてくれるスマート薪ストーブなんてものもあったが、我が家は悩んだ末に結局地元御代田の薪ストーブ屋さんが扱っているスペインのhergom(ヘルゴン)というブランドを選んだ。

今回家を設計してもらった友人の建築家upsetters architects岡部さんも、薪ストーブ選びは車選びくらいみんな違うと言っていて、これまで設計した家でも同じ薪ストーブを使ったことはほとんどないと言っていた。

まあ家を何度も建てる人はそうそういないので、だいたいの人は使うとしても一生に一つの薪ストーブしか使わないのだから、みんな言うことが違うのも仕方がない。

家の環境もそれぞれだ。薪ストーブは、暖められた空気が上昇気流になって煙突から出て行くパッシブな仕組みなので、我が家もそうだが最近の高気密高断熱の家では排気の煙突だけでなく吸気も外部から取り入れる必要がある。

それでも最初に火入れをした時は、気密性が高過ぎて、暖まる前に煙が室内に逆流して部屋中もくもくになって火災報知器を鳴らしてしまった。今も焚き付けの時だけはキッチンの換気扇を消したりちょっと窓を開けたりしている。

薪は幸いにも今のところ周りの友人たちからいろんな形で融通してもらっている。御代田に移住したのも知り合いのデザイナーやクリエイターが移住していてコミュニティがあったからで、そんなコミュニティの中で、自分が使わなくなった3Dプリンターやらバッテリーやらと薪を交換してもらったりしている。メルカリで売る前に、まずは薪を通貨にした薪経済圏での価値交換である。(ちなみにこういう融通し合う時のためにも45cmくらいの一般的な薪サイズが入る薪ストーブがおすすめだ。)

薪に火をつけるのにもコツがいる。空気の通り道をつくる必要があるし、大きな薪にいきなり火をつけても勝手に燃えてくれる訳ではない。かと言って、焚き付け用の細い枝や木片をいくらたくさん入れてもすぐ燃え尽きて暖まらない。焚き付けの火の勢いがあるうちに大きな薪が燃え始めるようにしないといけないのだ。

自分で燃え始めるまで、薪は燃やす対象だが、途中から自分で燃えるものになる。そうして燃えているうちに、また次の薪を燃やす対象として入れていく。炉内が200℃とかになればあとは入れれば燃える。火が燃え移るというより薪は高温で燃えるのだ。

スイッチオンでほったらかしではなく、こうやってちょっと頭を使って面倒をみながら火を眺める時間がなんとも言えずいい時間なのである。