脳は常に予測と実際のずれを最小化しようとしている。
これまでも何度も取り上げてきた「予測する脳」の話。この『脳の本質』によれば、これは外の世界に対する理解や行動だけでなく、体の内側の感覚や感情についても当てはまるのだという。
例えば心拍が速いとき、舞台の直前なら緊張/走ったあとなら当然/恋愛の場面ならときめき、というように、私たちの脳はこうした心拍や呼吸、体温、のどの乾き、内臓感覚などの内受容感覚の原因を推定し、それが感情体験になるというのである。
そして、この本で紹介されている感情理論によれば、感情は「不確実性」と強く紐付けられるという。不確実性が大きくなっていく時に人は不安や恐れの感情を抱き、逆に不確実性が小さくなっていく時に安心や希望の感情を抱くのだ。
特にこの話が興味深いのは、感情は、出来事の内容や不確実性の大きさよりも、「不確実性が上がるのか下がるのかという時間変化による」としているところだ。
「怖いことがあるから怖い」のではなく「予測できなさが増していくから怖い」のだ。
今、世界情勢はまさにこれからどうなってしまうのだろうという予測できなさが増している。
例えば今回の日米首脳会談に対する感情も、どんな予測や期待をしていたか次第で全く違っただろう。不確実性の高かった交渉がある程度予測の範囲内に収まったと感じたか、あんな風に振る舞うなんてありえないと感じたか。
いずれにせよ、現地では罪のない人たちが苦しみ、この先のエネルギーや食や経済がどうなるのかも全く予断を許さず、実際のところ事態はまだ何も解決していない。
そして、感情とは不確実性の上がり下がりによるものだという話に戻ると、こういう状況で、人は不確実性を取り除いてくれるような、これが真相だと断言してくれるような情報を求めてしまう。
そうなる前にまずは、自分のメンタルがやられないために、不確実性が増す情報の洪水から一定の距離を取ることも大事だと思う。