空間コンピュータ

オフィスにVision Proが届いたということで早速体験。初代iPhone発売の時もNYに住んでいた友人に買って送ってもらったのを思い出すが、今回もTakram NYメンバーに感謝である。

正直あの時ほどのピュアな期待やワクワクがないのは自分が良くも悪くも年齢と経験を重ねたからかなあとも思いつつ、やはり届いたと聞くと体験したくて今朝は朝一でオフィスに出社した。(※尚、技適特例申請済み)

グラフィックのクオリティは評判通り。既に体験した人が語っているようにAppleの作っているプロモーションムービーは確かに誇張ではない。

リアル空間に置かれた物理ディスプレイを見ているのと遜色ない感覚で、これなら仕事も出来るなという感じ。(Quest3では流石に仕事する気にはならない。)

そのクオリティでスクリーンを好きなように大きく出来る訳で、例えばホームシアターにお金をかけるような層にはリーズナブルに思えるかもしれない。個人的にも、値段はさておき欲しいかと言われたら素直に欲しいなと思ってしまった。

すでにVision Proアプリの開発に関わっている人はわかると思うが、Meta Questとは設計思想がだいぶ違う。AppleがXR(VR/AR/MR)といった言葉を使わず「空間コンピュータ(Spatial Computing)」と言ってるのは、単にマーケティング戦略というより素直に目指している方向性の違いである。

要するに、AppleはMacの「デスクトップ(ウィンドウが重なる2次元の画面)」メタファーの制約を取り払って、見渡せる空間上の好きなところにウィンドウを置ける、まさに「空間コンピュータ」を作りたかったのだと思う。

例えば、アプリを作る時、空間に配置するオブジェクトには、Window、Volume、Immersive Spaceという3種類が規定されている。

Windowは今まで通りの2次元のウィンドウ、Immersive Spaceはデスクトップでいえば全画面表示にあたる全空間表示、その中間的な存在として、奥行きをもったウィンドウとして箱状のVolumeという種別が規定されているのである。これは一つのアプリが空間全体を占有するMeta QuestなどこれまでのXRデバイスとは違う大きな特徴だ。

そういう意味で使い方も想像しやすい。表示サイズが自由になり、視線と手元の指の動きで操作できるのは、老眼などで画面を見るのがきつい人やある種の障害のあるユーザーにとってアクセシブルなコンピュータになる可能性もありそうだ。

ちなみに、エンジニアリング的には、iFixitが早速分解している動画を見ると、近年稀に見るパーツの多さと複雑さに(途中から説明放棄されて延々とConnector, Connector, Connector,…, Screw, Screw, Screw,…と呆れ気味のナレーションが続く 笑)よく量産したなと驚く。

これからどう評価されるのか、普及するのか正直分からない(iPhoneの時もわからなかった)が、ひとまず期待外れではなかったという第一印象は残しておこう。