ON THE FLYと「未来のかけら」

今日から21_21 DESIGN SIGHTで開催される企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」に久しぶりにON THE FLYを展示している。

ON THE FLYとは、何の変哲もない紙のカードをテーブルの上におくと、カードの上に文字や映像が浮かび上がる、紙とデジタルメディアを融合したインターフェイスである。「on the fly」=「その場で/動的に/即興で」という名の通り、カードをテーブルのどこに置いても、すばやく動かしても、常に紙の位置にぴったり合わせた映像を正確に映し出すことができる、いわばインタラ クティブなリアルタイムプロジェクションマッピ ングである。また、動かした紙の位置を認識するだけでなく、紙に開けられた穴を指でふさぐことで、穴をスイッチ代わりにして表示されるコンテンツを切り替えることもできる。

今回展示しているバージョンは、東京スカイツリーにある「千葉工業大学東京スカイツリータウンキャンパス」にも常設展示されているもので、ロボットの設計図が描かれた紙のカードをテーブルの上におくと、動くロボットの映像が紙の上の設計図にぴったり合わせて投影される仕掛けである。すぐ横に実物のロボットも展示されていたり、ロボットの3D設計図をぐりぐりと舐め回すように見ることができる壁面いっぱいを使ったプロジェクション展示もある。

ON THE FLYを最初につくったのは2008年。YCAMで行われた「ミニマムインターフェース展」という展覧会の会場ナビゲーションとしてだった。スカイツリーのオープンも2012年なので、そこからでももう10年以上経つが、昨日の内覧会でもたくさんの人に驚いていただけて嬉しい限りだ。

これまで、企業のショールームなどの常設展示や、百貨店でのサイネージ、さまざまなブランドのイベント(例えばDom Pérignonによる招待制のディナーイベントでは招待状をかざすとその人へのメッセージが表示されるなど)など、インタラクティブな展示システムとして国内外で利用していただいたが、コロナ禍でこうしたインタラクティブな展示の機会がなくなっていたので、久しぶりの展示の機会を頂けてありがたい。

今回の企画展は、僕の師匠である山中俊治さんの東京大学での取り組みをはじめとする近年の活動の集大成とも言えるような展覧会であり、さらに今回の企画展のために生まれた研究者とクリエイターのコラボレーションによる新作もどれもとても興味深い。最先端の科学技術とデザインが出会うことで生まれる「未来のかけら」をぜひ見に行ってみて欲しい。