はじめる動機、つづける動機

誰しも自らすすんでやりたくなること、モチベーションが自然と生まれてくることがあるんじゃないだろうか。

そうしたモチベーションのもちようは人それぞれであり、チームで何かをするときには、お互いのタイプの違いを知っておくとよい。仕事に限らず、目標と現状にギャップがあるときは何かを変える必要がある(環境が整っていなければ環境を整えるとか、スキルが足りなければスキルを磨くとか)が、性格や性分のようになかなか変えられないものもあって、それは無理に変えようとせず、それぞれに合ったやり方をした方がよく、その一つがこうしたモチベーションのタイプだという。Takramで1on1を始めるときにcoachedさんにサポートしてもらってこうしたことを教えてもらったのだが、そこで知ったのが 「マクレランドの欲求理論」をベースにした4つのモチベーションタイプだ。

この理論によると、人間の行動の動機づけに影響を与える欲求には次のようなものがあるらしい。

達成欲求(Need for Achievement)
高い目標を設定し、それを達成したいという欲求。挑戦を好み、達成感や成功を重視する。何かを達成することにモチベーションを感じるタイプ。

権力欲求(Need for Power)
他者に影響を与えたいという欲求。影響力を持つことで目標を実現しようとする。責任ある地位や影響力をもつことにモチベーションを感じるタイプ。

親和欲求(Need for Affiliation)
他者と良好な関係を築きたいという欲求。調和や受け入れを求め、友好関係を重視する。他者に協力することにモチベーションを感じるタイプ。

回避欲求(Need for Avoidance)
困難や失敗から逃れたいという欲求。ストレスやリスクを避け、安全な状態を維持することにモチベーションを感じるタイプ。

こうした性格診断はどれか一つに当てはまるということではなく、誰しも持っているが強弱があるというものだと思うが、診断テストをしたら確か自分は親和欲求が強い傾向があり、なるほどその道ではよく知られた理論というだけあって納得感があった。

先日、とある会話の中でこの話になったのだが、この4つに当てはまらない「探求欲求」みたいなものもあるのではと言われ、確かに思った。達成にもやや近いが、達成できなくても探求自体が動機づけになることはありそうだ。上に付け加えるなら、

探求欲求(Need for Exploration)
新しい発見や経験をしたいという欲求。好奇心が強く変化を求め、未知の領域を探ることにモチベーションを感じるタイプ。

といったところか。

さらに考えていて、行動には、はじめる動機とつづける動機があるのではないかということに思い至った。

自分の場合、常に探求したい何かがあるかと言われると実はそこまででもなくて、何かをはじめるときには、クライアントだったり、家族や友人だったり、誰かのためになるとか誰かが喜んでくれるというモチベーションが必要なのだ。

ただいったん何かをはじめると、ここはもっとよくできるかもとか、他に方法はないかとか、可能性の探求がより強いモチベーションになっている気がするのだ。

そういえば、自宅のすべり出し窓につける網戸をDIYしていて、はじめた動機は家族に喜ばれるためだった気がするが、探求モードに入ってしまって未だに試作改良を重ねていて必要な窓に全部付けられていなくて家族にやや呆れられている。

仕事で考えると、まさに今やっているような仕事、つまりクライアントワークであり、なおかつ誰もまだ正解がわからないようなプロジェクトに関わることが自分に向いているんだなということに改めて気付かされた。クライアントの期待に応えたいという親和モチベーションではじめられて、さらに誰にとっても未知の領域への探求モチベーションでつづけられるのだから。もちろん、さすがに仕事では納期や依頼内容には応えた上で、あくまで”Over Deliver”として探求するように心がけているが。

はじめる動機とつづける動機をわけて考えてみると、より自分の性格や性分にあった物事の進め方ができるようになるかもしれない。