昨日は朝から今年も一緒に米づくりに関わる人たちと田んぼの周りの草を刈り、水路の泥を掻いて詰まっていた水の流れが復活した。
御代田に移住して、縁あって米づくりに関わるようになって、デザインにせよテクノロジーにせよ、何かを作ったり考えたりする時の心の片隅には、常に田んぼやその周りの自然環境や関わる人たちのことがある。
一方、米不足のニュースを見ても、出てくるのは数字ばかりで、米が出来る田んぼや、米をつくる人の営みが見えてこない。備蓄米を何トン放出したのに価格が下がらないとか、そういうことじゃないだろうと。
昨夜Eテレで放送されたETV特集「田んぼ×未来 あきらめないコメ農家たち」は、今こそ見て考えるべき内容だと思う。
農家の数が激減していく中、大規模な米づくりをあきらめない横田さん。人や機械はなるべく増やさず創意工夫で効率化を進めるが、今のままのやり方では限界も。いろんな「スマート農業」の実証実験に付き合いながらも実用とは言えない状況。でも感覚だけではなくデータを取って分析はしている。
中山間地域に移住し、夫婦で小規模な米づくりを行う鴫田さん。手間をかけた安くはない米を100人の顔の見えるお客さんにきちんと意味や価値を伝えて買ってもらってなんとかという状況。加えてこうした棚田のような環境を守る「中山間地域等直接支払」という補助金が僅かあるが、去年全体の申請額が当初予算を若干超え、その分補助金を削られたという。その額2億円。国家予算として大きな額ではないその削られた2億円が発する「国はコメ農家をあきらめさせたいのか?」というメッセージを懸念する。
「あきらめないコメ農家たち」という副題は、農家さんがあきらめたら未来がないことを示している。ルールもテクノロジーも、未来どころかいま現在あきらめずに支えてくれている人たちがあきらめないでいてくれるためのものになっていないんじゃないか。
テクノロジーに関わる人、デザインに関わる人、ビジネスに関わる人、政策に関わる人、思想哲学に関わる人、その他領域に関係なくあらゆる人、みんなで考えないと取り返しがつかないところまで来ているんじゃないか。
まずはとにかく土に触れたり、もしくはどんな形であれ自分たちの食べる米づくりに関わりを持ってみてはどうだろう。何よりごはんが美味しくなるし、生きている(生かされている)という実感がある。
この番組を制作されたドキュメンタリー映画監督の柴田昌平さんは、近作映画『百姓の百の声』の続編、新作『未来にタネをまく』(仮題) を制作中。サイトから支援することが出来るので早速少額ながら支援させてもらった。
番組はNHKプラスから。5/1(木) 午前0時(4/30深夜)から再放送もあります。